「屋根の雨漏り修理の葺き替え工事の費用が思ったよりも高額で安くしたい」「本当に今の家に屋根の葺き替えは必要なの?」そう疑問に感じて屋根の葺き替え工事について調べていませんか?
屋根の葺き替え工事は屋根リフォームの中でも大規模な工事で、実際に屋根の葺き替え工事を検討する際は、「住宅の建て替え」や「増改築」などの住宅のメンテナンスサイクルや「不動産売却」などのライフプランを考慮して慎重に検討することが重要です。
また、屋根の葺き替え工事は100万円を超える高額な工事なため、リフォーム業者によっては積極的に提案してくる屋根工事です
。
特に、営業に特化している業者は「葺き替える必要のない屋根であっても」強引に屋根の葺き替え工事を勧めてくる業者も多いので注意が必要です。
この記事では現在、屋根の葺き替え工事を検討している方に正しい屋根リフォームの知識を身につけてもらうために、屋根の葺き替え工事の基礎知識について解説します。
屋根の葺き替え工事の費用を極限まで安くする方法や費用対効果が最大化する屋根の葺き替え工事のタイミングを具体的に解説します。
目次 [非表示]
- 1. 屋根葺き替え工事とは?基礎知識とメリット・デメリット
- 1-1. 葺き替えとカバー工法(重ね葺き)の違い
- 1-2. 屋根葺き替えの主なメリット
- 1-2-1. 屋根下地から根本的な修繕が可能
- 1-2-2. 雨漏りのリスクを大幅に低減
- 1-2-3. 屋根材の種類を自由に選べる
- 1-2-4. 屋根の軽量化や耐震性向上に寄与
- 1-2-5. 断熱性や遮熱性の向上
- 1-2-6. 美観の一新と資産価値の向上
- 1-3. 屋根葺き替えのデメリットと注意点
- 1-3-1. 費用が高額になりやすい
- 1-3-2. 工期が長くなる傾向がある
- 1-3-3. 騒音や粉塵が発生しやすい
- 1-3-4. 工事中に一時的な雨漏りのリスク
- 1-3-5. アスベスト含有屋根材の場合、追加費用と専門業者が必要
- 2. 屋根葺き替え工事の費用相場【屋根材別・坪数別】
- 2-1. 葺き替え費用の基本的な内訳
- 2-2. 屋根材別の葺き替え費用相場
- 2-3. 坪数別の費用目安
- 2-4. 葺き替え工事以外の費用(付帯工事など)
- 2-4-1. 雨樋の交換・修理
- 2-4-2. 破風板・鼻隠しの補修・塗装
- 2-4-3. 雪止め設置
- 2-4-4. 天窓(トップライト)の交換・設置
- 2-4-5. 太陽光パネルの脱着費用
- 2-4-6. アンテナの脱着費用
- 3. 屋根葺き替えが必要なタイミングと判断基準
- 3-1. 既存屋根材の耐用年数(寿命)が過ぎた場合
- 3-2. 雨漏りが発生している場合
- 3-3. 屋根下地の劣化が激しい場合
- 3-4. 耐震性向上や軽量化を目的とする場合
- 3-5. 美観の向上やデザイン変更を希望する場合
- 4. 屋根葺き替え工事の具体的な流れと工期
- 4-1. 工事前の準備と近隣への配慮
- 4-2. 足場の設置
- 4-3. 既存屋根材の撤去と処分
- 4-4. 野地板・下地の補修・設置
- 4-5. ルーフィング(防水シート)の設置
- 4-6. 新しい屋根材の設置
- 4-7. 棟板金など役物の設置
- 4-8. 最終確認と足場の撤去
- 4-9. 工期はどのくらい?季節による影響は?
- 5. 屋根葺き替え費用を安く抑える3つのポイント
- 5-1. 複数の業者から相見積もりを取る
- 5-2. 自社施工の専門業者を選ぶ
- 5-3. 火災保険や補助金・助成金を活用する
- 5-3-1. 火災保険の活用
- 5-3-2. 補助金・助成金の活用
- 5-4. 葺き替え以外の工法(葺き直し・カバー工法)も検討する
- 5-4-1. 葺き直し工法
- 5-4-2. カバー工法(重ね葺き)
- 6. 信頼できる屋根工事業者の選び方
- 6-1. 実績と専門性があるか
- 6-2. 丁寧な説明と明確な見積もりか
- 6-3. 保証やアフターフォローは充実しているか
- 6-4. 悪徳業者に注意!手口と見分け方
- 6-4-1. 悪徳業者の主な手口
- 6-4-2. 信頼できる業者を見分けるポイント
- 7. 屋根葺き替えに関するよくある質問
- 7-1. 葺き替え工事中に雨が降ったらどうなりますか?
- 7-1-1. 雨天時の工事対応
- 7-1-2. 工期への影響と業者との連携
- 7-2. 工事中の騒音や振動はどのくらいですか?
- 7-2-1. 騒音・振動の主な発生源
- 7-2-2. 騒音・振動のレベルと対策
- 7-3. 葺き替えと同時に太陽光パネルを設置できますか?
- 7-3-1. 同時設置のメリット
- 7-3-2. 同時設置の注意点
- 8. まとめ
屋根葺き替え工事とは?基礎知識とメリット・デメリット



屋根の葺き替え工事とは、既存の屋根材を撤去して、新しい屋根材に張り替える(葺き替える)屋根リフォームの工法で、「日本瓦」や「セメント瓦」などの”瓦屋根”の住宅で施工されることが多いのが特徴です。
一方で、「スレート(コロニアル)」や「トタン」などの瓦以外の屋根はカバー工法(重ね葺き)と呼ばれるリフォーム工法で新しく屋根を葺き替えるのが現在の主流です。
「屋根の葺き替え」と「カバー工法(重ね葺き)」は”屋根を新しくする”ということは同じですが、工法が全く異なるために、それぞれの工法の特徴や注意点について理解を深めましょう。
葺き替えとカバー工法(重ね葺き)の違い

「屋根の葺き替え工事」は既存の屋根材を撤去して、新しい屋根材に張り替える屋根のリフォーム工法に対して、屋根の重ね葺き(カバー工法)は既存の屋根の材の上から新しい屋根材を被せる屋根のリフォーム工法です。
上記のイラストは屋根の「葺き替え」と「重ね葺き(カバー工法)」を比較した表ですが、屋根の重ね葺き(カバー工法)は葺き替えと比べて屋根材の撤去費用が発生しないために、屋根材の撤去・廃棄費用が発生しないために、費用が安くなるのが特徴です。
一方で、重ね葺き(カバー工法)は屋根が二重構造になるために雨漏りなどの屋根の構造的な不具合が生じた場合に原因の特定やメンテナスが困難になるのが弱点です。
屋根の重ね葺き(カバー工法)は「既存の屋根材に新しい屋根材を被せる」という施工方法の都合から平坦(平ら)な屋根でしか施工ができために、凹凸の多い”日本瓦”や”セメント瓦”の屋根では施工できません。
屋根の重ね葺き(カバー工法)はコロニアルやカラーベストなどのスレート屋根やトタン屋根などの平坦な屋根に限定された屋根リフォーム工法ということを覚えておきましょう。
項目 | 葺き替え工事 | カバー工法(重ね葺き) |
---|---|---|
既存屋根材の撤去 | あり(全て撤去) | なし(既存屋根材の上から施工) |
下地の状態確認・補修 | 可能(徹底的に実施) | 不可(既存屋根材に隠れるため) |
費用相場 | 高額になりやすい | 比較的安価 |
工期 | 長め | 短め |
屋根の軽量化 | 可能(新しい軽量な屋根材を選べる) | 不可(既存屋根材の重量に加えて新しい屋根材の重量が加わるため、重くなる) |
処分費用 | 発生する | 発生しない |
適用条件 | 全ての屋根材・下地の状態に対応可能 | 既存屋根材の劣化が軽度で、下地が健全な場合のみ |
断熱性・遮熱性 | 向上させやすい(下地から見直せるため) | ある程度向上する |
屋根葺き替えの主なメリット
屋根葺き替え工事は費用や工期がかかるものの、その分多くのメリットがあります。主なメリットは以下の通りです。
-
屋根下地から根本的な修繕が可能
既存の屋根材をすべて撤去するため、雨漏りの原因となる下地の腐食や野地板の劣化などを直接確認し、補修・交換できます。これにより、屋根全体の耐久性や防水性が新築時と同等、あるいはそれ以上に回復し、長期的な安心感が得られます。
-
雨漏りのリスクを大幅に低減
下地の補修や防水シート(ルーフィング)の交換も同時に行うため、雨漏りの原因となる箇所を徹底的に改善できます。これにより、将来的な雨漏りの発生リスクを大幅に低減し、家屋の構造材を守ることができます。
-
屋根材の種類を自由に選べる
既存の屋根材の種類に縛られず、様々な新しい屋根材から自由に選択できます。例えば、耐久性の高い瓦、軽量で耐震性に優れたガルバリウム鋼板、デザイン性の高いスレートなど、ご自身の好みや家のスタイル、予算に合わせて最適な屋根材を選ぶことが可能です。
-
屋根の軽量化や耐震性向上に寄与
古い瓦屋根から軽量なガルバリウム鋼板などに葺き替えることで、屋根全体の重量を大幅に軽減できます。屋根が軽くなることは、地震発生時の建物の揺れを小さくし、耐震性を向上させる上で非常に有効です。
-
断熱性や遮熱性の向上
葺き替え工事の際に、高性能な断熱材や遮熱シートを下地材として導入することも可能です。これにより、夏は涼しく冬は暖かい、快適な室内環境を実現し、冷暖房費の節約にもつながります。
-
美観の一新と資産価値の向上
屋根材を新しくすることで、建物の外観が大きく変わり、美観が向上します。特に、経年劣化した屋根は家の印象を悪くしますが、葺き替えによって新築のような美しさを取り戻し、住まいの資産価値を高めることにもつながります。
屋根葺き替えのデメリットと注意点
多くのメリットがある葺き替え工事ですが、いくつかのデメリットや注意点も存在します。これらを理解した上で、検討を進めることが重要です。
-
費用が高額になりやすい
葺き替え工事は、既存屋根材の撤去・処分費用、新しい屋根材の費用、下地補修費用、足場設置費用など、工事内容が多岐にわたるため、他の屋根リフォーム工法に比べて費用が高額になる傾向があります。
-
工期が長くなる傾向がある
既存屋根材の撤去から新しい屋根材の設置まで、多くの工程を要するため、工事期間が長くなります。一般的には1週間から2週間程度かかることが多いですが、屋根の形状や天候、使用する屋根材の種類によってさらに延びる可能性もあります。
-
騒音や粉塵が発生しやすい
既存屋根材の撤去作業や新しい屋根材の加工時には、騒音や粉塵が発生します。近隣住民への配慮が必要となるため、事前に工事内容や期間を伝えておくことが大切です。
-
工事中に一時的な雨漏りのリスク
既存の屋根材を撤去する期間は、一時的に屋根が剥き出しの状態になります。この間に予期せぬ雨が降ると、一時的に雨漏りが発生するリスクがあります。信頼できる業者は、万が一に備えて養生シートなどで対策を講じますが、注意が必要です。
-
アスベスト含有屋根材の場合、追加費用と専門業者が必要
築年数の古い住宅の屋根材には、アスベスト(石綿)が含まれている場合があります。アスベスト含有屋根材の撤去には、専門の資格を持つ業者による特別な作業と厳重な処分が必要となり、通常よりも高額な費用が発生します。事前に屋根材の種類を確認し、必要であればアスベスト調査を行うことをおすすめします。
屋根葺き替え工事の費用相場【屋根材別・坪数別】
屋根葺き替え工事は、決して安価なものではありません。しかし、適切な時期に工事を行うことで、住まいの寿命を延ばし、快適な暮らしを守ることができます。ここでは、屋根葺き替え工事にかかる費用の内訳や、屋根材別・坪数別の費用相場について詳しく解説します。
葺き替え費用の基本的な内訳
屋根葺き替え工事の費用は、主に以下の項目で構成されます。それぞれの項目が費用総額に大きく影響するため、内訳を理解しておくことが重要です。
費用項目 | 内容 | 費用相場(一般的な目安) |
---|---|---|
足場設置費用 | 高所作業の安全確保のために必須。家の外周全体に設置します。 | 600~1,000円/㎡(足場面積) |
既存屋根材の撤去・処分費用 | 既存の屋根材を剥がし、産業廃棄物として適切に処分する費用。屋根材の種類によって費用が異なります。 | 1,500~3,000円/㎡ |
野地板・下地補修費用 | 既存の野地板(下地材)の劣化状況に応じて、補修や部分的な張り替えを行う費用。 | 1,000~3,000円/㎡(補修範囲による) |
ルーフィング(防水シート)設置費用 | 新しい屋根材の下に敷く防水シートの材料費と施工費。雨水の侵入を防ぐ重要な工程です。 | 500~1,000円/㎡ |
新しい屋根材費用(材料費+施工費) | 選択する屋根材の種類によって費用が大きく変動します。材料費と職人の工賃が含まれます。 | 3,000~10,000円/㎡以上(屋根材による) |
棟板金・役物設置費用 | 屋根の頂点や端部に設置する板金や役物の材料費と施工費。 | 2,000~5,000円/m(長さ) |
諸経費 | 運搬費、現場管理費、廃材運搬費、清掃費などが含まれます。 | 工事費全体の5~10% |
これらの費用項目は、屋根の形状、勾配、既存屋根材の種類、使用する新しい屋根材、そして依頼する業者によって変動します。特に、既存屋根材にアスベストが含まれている場合は、撤去・処分費用が通常よりも高額になるため注意が必要です。
屋根材別の葺き替え費用相場
屋根葺き替え工事の費用を大きく左右するのが、新しく使用する屋根材の種類です。ここでは、主要な屋根材ごとの特徴と費用相場をご紹介します。
屋根材の種類 | 特徴 | 費用相場(材料費+施工費/㎡) |
---|---|---|
スレート(コロニアル・カラーベスト) |
|
3,000~6,000円/㎡ |
ガルバリウム鋼板 |
|
5,000~9,000円/㎡ |
日本瓦(陶器瓦・いぶし瓦など) |
|
7,000~12,000円/㎡ |
アスファルトシングル |
|
4,000~7,000円/㎡ |
セメント瓦(コンクリート瓦) |
|
4,000~7,000円/㎡ |
これらの費用はあくまで目安であり、屋根の形状(複雑なほど高くなる)、勾配、業者、地域によって変動します。ご自身の希望する屋根材と予算を考慮し、最適な選択をすることが重要です。
坪数別の費用目安
住宅の延床面積(坪数)から、おおよその屋根面積を算出し、葺き替え工事の総額目安を把握することができます。一般的に、屋根面積は延床面積の1.2~1.7倍程度になると言われています(屋根の勾配や形状による)。
延床面積(坪) | 延床面積(㎡) | おおよその屋根面積(㎡) | 葺き替え費用目安(総額) |
---|---|---|---|
20坪 | 約66㎡ | 約80~110㎡ | 80万円~180万円 |
30坪 | 約99㎡ | 約120~170㎡ | 120万円~250万円 |
40坪 | 約132㎡ | 約160~220㎡ | 160万円~300万円 |
50坪 | 約165㎡ | 約200~280㎡ | 200万円~400万円 |
上記の費用目安は、中程度の屋根材(スレートやガルバリウム鋼板など)を選んだ場合の概算です。日本瓦のような高価な屋根材を選択した場合や、屋根の形状が複雑な場合は、さらに費用が高くなる可能性があります。また、既存屋根材の劣化が激しい場合や、下地の補修範囲が広い場合も費用が上乗せされます。正確な費用を知るためには、必ず現地調査と見積もりを依頼しましょう。
葺き替え工事以外の費用(付帯工事など)
屋根葺き替え工事を行う際、本体工事以外にも発生する可能性のある費用があります。これらは「付帯工事」と呼ばれ、状況に応じて必要となるものです。
-
雨樋の交換・修理
屋根工事と同時に行うことで、足場代を節約できる場合があります。既存の雨樋が劣化している場合は、この機会に交換を検討しましょう。費用は2,000~5,000円/m程度が目安です。
-
破風板・鼻隠しの補修・塗装
屋根の端部にある破風板や鼻隠しは、風雨にさらされ劣化しやすい部分です。葺き替え時に足場があるため、同時に補修や塗装を行うと効率的です。費用は1,000~3,000円/m(塗装)または3,000~8,000円/m(交換)程度です。
-
雪止め設置
積雪地域では、屋根からの落雪を防ぐために雪止め金具の設置が推奨されます。新しい屋根材に合わせて設置することで、落雪による事故やトラブルを未然に防ぎます。費用は500~1,500円/m程度です。
-
天窓(トップライト)の交換・設置
天窓も屋根材と同様に経年劣化します。葺き替え時に交換することで、雨漏りのリスクを減らし、断熱性や採光性を向上させることができます。費用は10万円~30万円程度(本体価格+設置費)です。
-
太陽光パネルの脱着費用
太陽光パネルが設置されている屋根の場合、葺き替え工事を行うためには一時的にパネルを取り外し、工事後に再設置する必要があります。この脱着作業には別途費用が発生します。費用は10万円~30万円程度が一般的です。
-
アンテナの脱着費用
テレビアンテナなども屋根に設置されている場合、一時的な取り外しと再設置が必要になることがあります。費用は1万円~3万円程度です。
これらの付帯工事は、屋根の状況やお客様の希望に応じて発生するものです。見積もり時には、これらの項目が含まれているか、またその必要性について業者と十分に話し合いましょう。
屋根葺き替えが必要なタイミングと判断基準
屋根の葺き替え工事は、決して安価なものではありません。しかし、適切なタイミングで実施することで、建物の寿命を延ばし、安全性を確保する上で非常に重要です。ここでは、葺き替えが必要となる具体的なサインや判断基準について詳しく解説します。
既存屋根材の耐用年数(寿命)が過ぎた場合
屋根材にはそれぞれ耐用年数が定められており、その期間を過ぎると機能が低下し、劣化が急速に進む可能性が高まります。屋根材の耐用年数は、葺き替えを検討する際の最も基本的な判断基準の一つです。
一般的な屋根材の耐用年数は以下の通りです。
屋根材 | 一般的な耐用年数 | 主な特徴 | メンテナンス時期 | メンテナンス方法 |
---|---|---|---|---|
瓦(和瓦、洋瓦) | 50年以上 | 耐久性が高く、メンテナンス次第で半永久的に使用可能です。ただし、重量があるため耐震性に注意が必要です。 | 30年〜40年 | 葺き直し |
スレート(コロニアル、カラーベストなど) | 20年~30年 | 軽量でデザイン性が豊富ですが、塗装の劣化やひび割れが生じやすいです。 | 10年〜15年 | 屋根塗装 |
トタン | 15年〜25年 | 古い住宅や倉庫などでよく使われます。軽量で耐震性に優れますが、割れやすいです。 | 10年〜15年 | 葺き替え |
ガルバリウム鋼板 | 30年~40年 | 非常に軽量で耐久性・耐震性に優れます。サビに強いですが、傷がつくと劣化が進むことがあります。 | 40年以上 | 葺き替え・カバー工法 |
アスファルトシングル | 20年~30年 | 軽量で防水性・防音性に優れます。表面の石粒が剥がれ落ちることがあります。 | 15年~20年 | 葺き替え・カバー工法 |
耐用年数を過ぎた屋根材は、見た目の劣化だけでなく、防水性や耐久性が著しく低下している可能性があります。定期的な点検で屋根材の状態を確認し、耐用年数を考慮しながら葺き替えの時期を検討しましょう。
雨漏りが発生している場合
屋根の雨漏りは「瓦のズレ」や「ひび割れ」などの屋根材の劣化や不具合が原因で発生すると思われていますが、屋根材は最初に雨水の侵入を防ぐ1次防水であり、最終的には2次防水の屋根内部のルーフィング(防水シート)によって雨水の侵入を防いでいます。
このように屋根は1次防水の屋根材と、2次防水のルーフィング(防水シート)の二重構造で雨水が住宅の内部に侵入しないようにしていますが、「雨漏り」の発生は2次防水のルーフィング(防水シート)の不具合を意味します。
これは穴の空いた傘と同じで、穴が空いた箇所が1箇所であれば、部分補修で修理ができますが、穴が空いた箇所が複数箇所ある場合は、ルーフィング(防水シート)を張り替える必要があります。
また、ルーフィングも耐用年数(寿命)があり、種類にもよりますが30年〜40年を目安に交換が必要です。
このように雨漏りは屋根の2次防水であるルーフィング(防水シート)が劣化して破れたり、隙間が生じることが原因で発生するために、雨漏りの発生は屋根を葺き替える目安になります。
屋根下地の劣化が激しい場合
屋根材の下には、野地板や垂木といった屋根下地があり、建物の構造を支え、屋根材を固定する重要な役割を担っています。この下地が劣化している場合も、葺き替えが必要となる大きな要因です。
下地の劣化は、主に雨漏りの放置や結露、通気不良によって引き起こされます。以下のようなサインが見られる場合は、下地の劣化が疑われます。
- 屋根が部分的にたわんでいる
- 屋根を歩くとフワフワ、ブヨブヨする感触がある
- 天井裏からカビ臭がする、カビが発生している
- 屋根裏の野地板に腐食や変色が見られる
下地が腐食していると、屋根材をしっかりと固定できなくなり、強風で屋根材が飛散するリスクが高まります。また、下地の劣化が激しい場合は、カバー工法(重ね葺き)では対応できず、既存の屋根材と下地を撤去する葺き替え工事が必須となります。
耐震性向上や軽量化を目的とする場合

”日本瓦”や”セメント瓦”などの瓦屋根は、金属屋根のガルバリウム鋼板に葺き替えられるのが現在では一般的です。
瓦屋根から金属屋根のガルバリウム鋼板に葺き替えることで、屋根の重さが60%ほど軽量化されるために、住宅の耐震性を高める耐震リフォームで屋根を葺き替える施主も多いです。
また、ガルバリウム鋼板は屋根塗装の必要の無い、メンテナンスフリーの屋根材で耐用年数(寿命)も40年〜50年と非常に長期的でコストパフォーマンスに優れているのも魅力の一つです。
屋根を軽くすることで、住宅の重心が下がるために住宅の耐震性能が向上します。瓦屋根の住宅の耐震リフォームのタイミングも屋根を葺き替える最適な目安です。
美観の向上やデザイン変更を希望する場合
屋根は建物の顔とも言える部分であり、その状態は外観全体の印象を大きく左右します。色あせ、コケやカビの発生、ひび割れ、塗膜の剥がれなどが目立つ場合、美観の低下は避けられません。
単に見た目を良くしたいという目的だけでなく、以下のような理由で葺き替えを検討する方もいます。
- 家の雰囲気を一新したい
- 外壁塗装と合わせて屋根のデザインも変更したい
- よりモダンな、または伝統的な屋根材にしたい
- 太陽光パネルの設置に合わせて屋根材を新しくしたい
美観の向上は、住まいの満足度を高めるだけでなく、将来的に売却を検討する際にも有利に働くことがあります。機能的な問題がなくても、住まいの価値を高め、快適な暮らしを実現するために葺き替えを選ぶことも、大切な判断基準の一つです。
屋根葺き替え工事の具体的な流れと工期
屋根葺き替え工事は、既存の屋根材を撤去し、新しい屋根材に交換する大がかりな工事です。安全かつ確実に工事を進めるためには、具体的な工程とそれぞれの注意点を理解しておくことが重要です。ここでは、一般的な屋根葺き替え工事の具体的な流れと、気になる工期について詳しく解説します。
工事前の準備と近隣への配慮
工事が始まる前に、施主様と施工業者の間でいくつかの準備が必要です。まず、工事内容、費用、工期、支払い条件など、契約書の内容を最終確認します。疑問点があれば、工事開始前にすべて解消しておきましょう。
次に、工事日程が決まったら、近隣住民への挨拶回りを行います。工事中は騒音や振動、粉じんの発生、工事車両の出入りなどにより、近隣の方にご迷惑をおかけする可能性があります。事前に工事内容や期間を伝え、理解を求めることで、トラブルを未然に防ぐことができます。挨拶は、施工業者の担当者と一緒に伺うのが一般的です。
また、施主様ご自身でも、工事中の安全確保と作業効率のために、以下の準備をしておくと良いでしょう。
- 工事車両の駐車スペースを確保する(業者と相談)。
- 庭やベランダに置いてある鉢植えや物干し竿など、工事の邪魔になるものを移動させる。
- 屋根の近くにある窓や換気口は、粉じん対策のために閉めておく。
- 工事中に発生する可能性のある騒音や振動に備え、家の中の貴重品やデリケートなものを移動・保護する。
足場の設置

屋根工事において、足場の設置は安全確保と作業効率向上のために不可欠です。高所での作業となるため、職人の墜落防止はもちろん、屋根材や工具の落下による事故を防ぐためにも、労働安全衛生法に基づいたしっかりとした足場が組まれます。足場は、建物の外周全体を囲むように設置され、その際、飛散防止ネットも同時に張られます。これにより、屋根材の破片や粉じんが周囲に飛び散るのを防ぎ、近隣への影響を最小限に抑えます。
既存屋根材の撤去と処分

足場の設置が完了したら、いよいよ既存の屋根材の撤去作業に入ります。職人が屋根に上がり、手作業や電動工具を使って、古い屋根材を慎重に剥がしていきます。この際、屋根材の種類によってはアスベスト(石綿)が含まれている可能性があるため、事前の調査と適切なアスベスト除去作業(特別管理産業廃棄物としての処理を含む)が法律で義務付けられています。アスベストが含まれていない場合でも、撤去された屋根材は産業廃棄物として適切に処分されます。この工程で、屋根下地の状態が初めて露わになり、劣化の有無を確認することができます。
野地板・下地の補修・設置

既存屋根材の撤去後、下地である野地板(のじいた)の状態を詳細に確認します。野地板は屋根材を支える重要な部分であり、雨漏りや経年劣化によって腐食、カビの発生、たわみなどが見られることがあります。もし劣化が激しい場合は、腐食した部分を撤去し、新しい野地板(構造用合板など)に交換します。部分的な補修で済む場合もあれば、屋根全体の野地板を張り替えるケースもあります。この下地処理を丁寧に行うことで、新しい屋根材がしっかりと固定され、屋根全体の強度と耐久性が向上します。また、この段階で屋根の軽量化や耐震性向上を目的とした補強を行うこともあります。
ルーフィング(防水シート)の設置

野地板の補修・設置が完了したら、その上にルーフィング(防水シート)を敷き詰めます。ルーフィングは、屋根の防水性を担う最も重要な工程の一つです。万が一、新しい屋根材の隙間から雨水が浸入しても、ルーフィングが下地への水の浸入を防ぎ、雨漏りを防ぎます。ルーフィングは、屋根の軒先から棟に向かって、下から上へ重ねるように貼り付けられます。これは、雨水が重力で下へ流れることを考慮し、水が浸入しにくい構造にするためです。タッカーや専用の接着剤でしっかりと固定し、破れや隙間がないかを入念に確認しながら作業を進めます。
ルーフィングには、アスファルトルーフィングや改質アスファルトルーフィングなど、様々な種類があり、耐久性や価格が異なります。
新しい屋根材の設置

ルーフィングの設置が終わると、いよいよ新しい屋根材の取り付け作業に入ります。選択した屋根材(ガルバリウム鋼板、スレート、瓦など)によって、設置方法は異なります。一般的には、屋根の軒先から棟に向かって、屋根材を一枚一枚丁寧に葺いていきます。屋根材は専用の釘やビス、金具などを用いて野地板にしっかりと固定されます。屋根の形状に合わせて屋根材をカットしたり、加工したりする作業も発生します。職人の高い技術と経験が、屋根材の美しい仕上がりと確実な防水性に直結します。
棟板金など役物の設置

新しい屋根材の設置が完了したら、屋根の頂点である「棟(むね)」や、屋根の妻側(三角になっている部分の端)である「ケラバ」、屋根の谷部分など、雨仕舞いを強化する必要がある箇所に「役物(やくもの)」を取り付けます。代表的な役物には、棟板金(むねばんきん)や谷板金(たにばんきん)、雪止め金具などがあります。これらの役物は、屋根材の継ぎ目や端部からの雨水の浸入を防ぐ重要な役割を担っています。取り付け後には、隙間をコーキング材で埋めるなどして、徹底した防水処理が施されます。
最終確認と足場の撤去
全ての屋根材と役物の設置が完了したら、施工業者が最終的な仕上がりと防水性の確認を行います。屋根材の浮きや隙間がないか、役物が正しく取り付けられているか、コーキング処理は適切かなど、細部にわたってチェックします。問題がなければ、屋根の上や周囲に散らばった釘、屋根材の破片、ゴミなどを丁寧に清掃します。その後、安全に配慮しながら足場を解体・撤去します。足場が撤去された後、施主様ご自身でも外観を確認し、気になる点があれば速やかに業者に伝えましょう。
工期はどのくらい?季節による影響は?
屋根葺き替え工事の工期は、屋根の面積、形状、選択する屋根材の種類、天候、職人の人数などによって大きく変動しますが、一般的な住宅の場合、およそ1週間から2週間程度が目安となります。しかし、既存屋根材のアスベスト処理が必要な場合や、下地の劣化が激しく広範囲な補修が必要な場合は、さらに日数がかかることがあります。
また、季節や天候は工期に大きな影響を与えます。
- 雨天:ルーフィング設置や新しい屋根材の取り付けは、雨が降ると作業が中断されます。屋根下地や新しい屋根材が濡れるのを防ぐためです。これにより、工期が延長される可能性が高まります。
- 強風:高所作業であるため、強風時は安全確保のため作業を中断することがあります。屋根材や工具が飛散するリスクも考慮されます。
- 積雪・凍結:冬場の積雪や凍結は、作業を不可能にするため、工期に大幅な遅れが生じます。
- 真夏・真冬:猛暑や厳寒期は、職人の体調管理が難しく、作業効率が低下することがあります。熱中症対策や防寒対策を講じながらの作業となるため、通常よりも時間がかかることがあります。
これらの気象条件を考慮すると、梅雨時期や台風シーズン、真冬の積雪が多い地域での工事は、工期が長引くリスクが高いと言えます。比較的安定した気候の春や秋が、屋根葺き替え工事に適しているとされていますが、事前に業者と十分な打ち合わせを行い、予備日を設けるなど、余裕を持った計画を立てることが重要です。
屋根葺き替え費用を安く抑える3つのポイント
屋根の葺き替え工事は高額になることが多いため、できるだけ費用を抑えたいと考えるのは当然です。ここでは、費用を賢く節約するための具体的なポイントを4つご紹介します。これらの方法を実践することで、適正価格で質の高い工事を実現できる可能性が高まります。
複数の業者から相見積もりを取る
屋根葺き替え工事の費用を抑える上で、最も基本的かつ重要なのが複数の業者から相見積もりを取ることです。1社だけの見積もりでは、その価格が適正かどうか判断が難しく、不当に高額な費用を提示されるリスクもあります。
複数の業者に見積もりを依頼することで、以下のメリットが得られます。
- 価格の比較:各業者の費用を比較し、相場を把握できます。
- 提案内容の比較:使用する屋根材、工法、保証内容など、業者ごとの提案を比較検討できます。
- 信頼性の判断:見積もりの詳細さや担当者の対応から、信頼できる業者を見極めることができます。
目安としては、3社以上の業者から見積もりを取ることをおすすめします。見積もりを比較する際は、単に総額だけでなく、工事の内訳(足場代、既存屋根材撤去費用、処分費用、新しい屋根材費、工賃など)や使用する材料のグレード、保証期間などを細かく確認しましょう。安さだけで選ぶのではなく、価格と品質のバランスを見極めることが重要です。
自社施工の専門業者を選ぶ

屋根の葺き替え工事は自社で直接施工ができる「自社施工業者」と、実際の施工を下請け業者に委託する「下請け施工業者」の2種類の業者があります。
これは屋根の葺き替え工事だけではなく、外壁塗装や内装リフォームなどすべてのリフォームジャンルに当てはまりますが、屋根工事を専門とする「自社施工業者」に工事を依頼することで、「下請け施工業者」と比べて費用を安くすることができます。
ハウスメーカーや大手リフォーム会社は実際の工事を下請けに委託するために「下請け施工業者」に分類されますが、工事費用が高額で、自社施工業者と比べて、100万円以上高額になるケースもありますが、アフターフォローや保証体制が充実しているというメリットがあります。
一方で、地域の「瓦業者」や「屋根板金業者」、屋根リフォーム業者などが「自社施工業者」に分類され、高い施工品質と低価格が魅力ですが、”保証体制”が充実していない業者も多く、見極めが重要です。
どうしても業者の保証体制や施工品質が心配な場合は、「JIOのリフォーム瑕疵保険」加入することで、「施工品質の検査」や「工事後の保証体制」を確立してくれるのでオススメです。
このように屋根の葺き替え工事は自社直接施工の業者に依頼することで施工費用を安くすることができます。
- 中間マージンの削減:下請け業者を挟まないため、中間マージンが発生せず、その分費用を抑えられます。
- 責任の所在が明確:工事に関する全ての責任を自社が負うため、トラブル時の対応がスムーズです。
- コミュニケーションが円滑:直接職人とやり取りできるため、要望が伝わりやすく、認識のズレが生じにくいです。
- 品質管理の徹底:自社の職人が責任を持って施工するため、品質のばらつきが少なく、高い技術力が期待できます。
自社施工の業者かどうかは、会社のウェブサイトや実績、担当者との会話の中で確認できます。「自社職人が在籍しているか」「工事を下請けに丸投げしないか」などを質問してみましょう。
火災保険や補助金・助成金を活用する
屋根葺き替え工事の費用負担を軽減するために、火災保険や国・自治体の補助金・助成金を積極的に活用することを検討しましょう。
火災保険の活用
屋根の損傷が自然災害(台風、強風、積雪、落雷など)によるものであれば、火災保険が適用される可能性があります。火災保険は火事だけでなく、風災、雪災、雹災など幅広い自然災害による損害を補償の対象としているため、ご自身の加入している保険内容を確認してみましょう。
火災保険を活用する際のポイントは以下の通りです。
- 被害状況の確認:屋根の損傷が自然災害によるものか、いつ発生したかを確認します。
- 保険会社への連絡:速やかに保険会社に連絡し、被害状況を説明します。
- 専門業者による調査と見積もり:保険会社に提出するための被害状況報告書や見積もりを、専門業者に作成してもらいます。
- 申請手続き:保険会社の指示に従い、必要な書類を提出します。
ただし、経年劣化による損傷や、自己負担額(免責金額)が設定されている場合は、保険金が支払われない、または全額カバーされないことがあります。また、申請期限が設けられている場合もあるため、被害が確認されたら早めに保険会社に相談することが重要です。
補助金・助成金の活用
国や地方自治体によっては、住宅のリフォームや改修工事に対して補助金や助成金制度を設けている場合があります。特に、耐震性の向上、省エネ性能の改善、アスベスト除去などを目的とした屋根工事は、対象となる可能性が高いです。
主な補助金・助成金の種類と例:
種類 | 主な目的・対象工事 | 活用メリット |
---|---|---|
耐震改修補助金 | 旧耐震基準の建物の屋根を軽量化し、耐震性を向上させる工事 | 地震対策と費用軽減を両立 |
省エネリフォーム補助金 | 遮熱・断熱性能の高い屋根材への葺き替え工事 | 光熱費削減と費用軽減 |
アスベスト除去補助金 | アスベスト含有屋根材の撤去・処分を伴う葺き替え工事 | 健康被害リスクの低減と費用軽減 |
地域型住宅グリーン化事業 | 省エネ性能や耐久性等に優れた木造住宅の改修工事 | 長期優良住宅化への貢献 |
これらの制度は、募集期間や対象工事、申請条件が細かく定められており、年度ごとに内容が変更されることもあります。お住まいの自治体のウェブサイトや窓口、または屋根工事業者に相談して、最新の情報を確認するようにしましょう。工事着工前に申請が必要なケースがほとんどなので、計画段階で情報収集を行うことが大切です。
葺き替え以外の工法(葺き直し・カバー工法)も検討する
「葺き替え」は既存の屋根材を全て撤去し、下地から新しくする工事ですが、屋根の状態や既存の屋根材の種類によっては、より費用を抑えられる「葺き直し」や「カバー工法」も選択肢として検討できます。葺き直し工法
屋根の葺き替え工事は重ね葺き(カバー工法)が施工できない瓦屋根で施工される事例が多いです。
雨漏り修理などの屋根修理で屋根を葺き替える場合は、既存の瓦を再利用する「葺き直し」にすることで屋根の葺き替え費用を大幅に安くすることが可能です。
「葺き直し」とは既存の瓦(日本瓦)を撤去して、野地板(屋根材の土台となるの板)の補修やルーフィング(防水シート)の交換したのちに、撤去した瓦(日本瓦)を戻す屋根の葺き替え工法です。
この「葺き直し」は耐用年数(寿命)が80年〜100年と非常に長い日本瓦でしか施工することができませんが、「葺き替え」と比べて既存屋根材の廃棄費用や、新しい屋根の購入費用が発生しないために、施工費用を大幅に安くすることができます。
メリット:
- 既存の瓦を再利用するため、材料費が安価。
- 瓦の持つ耐久性や美観を維持できる。
- 廃棄物の発生を抑えられる。
デメリット:
- 瓦の再利用が前提のため、他の屋根材には適用できない。
- 瓦の状態によっては、再利用できないものもある。
- 瓦の取り外し・再設置に手間がかかるため、工賃はそれなりにかかる。
既存の瓦が比較的きれいで、下地や防水シートの劣化が主な原因の場合に有効な選択肢です。
カバー工法(重ね葺き)
カバー工法は、既存の屋根材を撤去せずに、その上から新しい防水シートと屋根材を重ねて設置する工法です。既存の屋根材の撤去費用や処分費用がかからないため、葺き替えよりも費用を抑えられます。
メリット:
- 既存屋根材の撤去・処分費用が不要なため、葺き替えよりも費用が安価。
- 工期が短縮される。
- 二重構造になることで、断熱性や遮音性が向上する。
デメリット:
- 既存屋根材の劣化が激しい場合や、下地に問題がある場合は適用できない。
- 屋根全体の重量が増加するため、建物の耐震性に影響を与える可能性がある(軽量な屋根材を選ぶことで対策可能)。
- 屋根の厚みが増す。
カバー工法は、既存の屋根材がスレート(コロニアル、カラーベスト)やアスファルトシングルで、下地に大きな問題がない場合に適しています。ただし、屋根材の重量増加による耐震性への影響を考慮し、軽量なガルバリウム鋼板などを選択することが一般的です。
どちらの工法が最適かは、現在の屋根の状態、屋根材の種類、建物の構造などによって異なります。専門業者に診断してもらい、それぞれの工法のメリット・デメリット、費用、耐用年数などを詳しく説明してもらった上で、最適な方法を選択しましょう。
信頼できる屋根工事業者の選び方
屋根葺き替え工事は、決して安価なものではなく、建物の安全性や耐久性に直結する重要なリフォームです。そのため、信頼できる屋根工事業者を選ぶことが、後悔しない工事を実現するための最重要ポイントと言えます。悪徳業者に騙されたり、手抜き工事をされたりしないよう、以下のポイントを参考に慎重に業者を選びましょう。
実績と専門性があるか
屋根工事は専門知識と高い技術を要するため、実績と専門性を持つ業者を選ぶことが不可欠です。以下の点を確認しましょう。
- 豊富な施工実績: 創業年数やこれまでの施工事例を確認し、様々な屋根材や工法に対応できる経験があるかを見極めましょう。できれば、自身の住まいと似たタイプの屋根の施工実績があれば、より安心です。業者のウェブサイトやパンフレットで施工事例の写真を確認したり、直接問い合わせて具体的な実績を聞いたりするのも良いでしょう。
- 屋根工事の専門性: リフォーム全般を扱う業者の中には、屋根工事を下請けに丸投げするケースもあります。中間マージンが発生し費用が高くなるだけでなく、責任の所在が曖昧になる可能性もあります。自社で屋根工事の職人を抱え、直接施工を行っている専門業者であれば、品質管理が徹底され、費用も抑えられる傾向にあります。
- 資格の有無: 建築士、施工管理技士、瓦葺き技能士などの専門資格を持つスタッフが在籍しているかも、技術力の目安になります。特に、瓦葺き技能士は屋根材に関する専門知識と技術を持つ証拠です。
- 地域密着型か: 地域に根差した業者は、地域の気候や特性を理解しており、万が一のトラブル時にも迅速な対応が期待できます。また、地域の評判や口コミも確認しやすいため、選定の際の参考にしやすいでしょう。
丁寧な説明と明確な見積もりか
信頼できる業者は、顧客に対して丁寧で分かりやすい説明を心がけ、見積もりも明確です。以下の点に注目して判断しましょう。
- 詳細な現地調査: 契約前に、屋根の状態を詳しく診断するための現地調査を丁寧に行うかを確認しましょう。ドローンを使用したり、屋根裏まで確認したりするなど、多角的に調査する業者は信頼性が高いと言えます。
- 分かりやすい説明: 調査結果に基づき、屋根の現状、必要な工事内容、使用する屋根材の種類、工法、工事期間などについて、専門用語を避け、素人にも理解できるよう丁寧に説明してくれるかが重要です。複数の選択肢を提示し、それぞれのメリット・デメリットを比較検討させてくれる業者であれば、より安心です。
- 明確な見積書: 見積書は、材料費、工事費(足場代、既存屋根材の撤去・処分費、野地板補修費、ルーフィング設置費、新しい屋根材設置費など)、諸経費といった内訳が詳細かつ具体的に記載されているかを確認しましょう。「一式」といった曖昧な表現が多い見積書は注意が必要です。
- 追加費用の説明: 工事中に予期せぬ劣化が見つかり、追加費用が発生する可能性について、事前にきちんと説明し、その際の対応についても明示してくれるかを確認しましょう。
以下に、見積書で特に確認すべき項目をまとめました。
項目 | 確認すべき内容 |
---|---|
足場設置費用 | 設置・解体費用、養生費用が含まれているか。 |
既存屋根材撤去・処分費用 | 屋根材の種類と量に応じた適正な費用か。アスベスト含有の場合の追加費用説明。 |
下地補修費用 | 野地板の交換や補強が必要な場合の費用。 |
ルーフィング費用 | 使用する防水シートの種類と㎡単価。 |
屋根材費用 | 選定した屋根材の種類、メーカー、㎡単価、枚数。 |
役物(棟板金、軒先唐草など)費用 | 各部材の費用。 |
諸経費 | 運搬費、現場管理費など、具体的な内訳。 |
消費税 | 税込み価格か税抜き価格か。 |
保証やアフターフォローは充実しているか
工事後の安心を確保するためには、保証やアフターフォローの有無と内容が非常に重要です。
- 工事保証: 業者が独自に設けている工事保証の有無、保証期間、保証内容を確認しましょう。最低でも10年程度の保証があるかが目安です。保証書の発行があるかどうかも重要です。
- メーカー保証: 使用する屋根材には、メーカーによる製品保証が付帯している場合があります。メーカー保証の内容や期間についても確認し、保証書が発行されるか確認しましょう。
- アフターメンテナンス: 工事完了後の定期点検や、不具合発生時の対応について、具体的にどのようなアフターフォローがあるかを確認しましょう。有償・無償の範囲や、緊急時の連絡体制なども聞いておくと安心です。
- 損害賠償保険への加入: 万が一、工事中に事故が発生したり、第三者に損害を与えたりした場合に備え、業者が損害賠償保険に加入しているかを確認することも大切です。
悪徳業者に注意!手口と見分け方
残念ながら、屋根工事には悪徳業者も存在します。被害に遭わないためにも、その手口と見分け方を理解しておくことが重要です。
悪徳業者の主な手口
- 突然の訪問や電話営業: 「近所で工事をしているので」「無料で点検します」などと突然訪問し、不安を煽って契約を迫るケースが多いです。
- 不安を煽る説明: 「このままでは屋根が崩れる」「雨漏り寸前だ」などと、実際よりも大げさに劣化を強調し、緊急性を装って契約を急がせます。
- 「今だけ」「モニター価格」などの即決要求: 「今日中に契約すれば大幅割引」「限定〇名様まで」などと、考える時間を与えずに契約を迫ります。
- 見積もりが極端に安い、または高い: 相場からかけ離れた見積もりは要注意です。極端に安い場合は手抜き工事の可能性があり、高すぎる場合は不当な利益を上乗せしている可能性があります。
- 契約前の高額な手付金や全額前払い要求: 工事着手前に多額の費用を要求する業者は、持ち逃げや工事途中で連絡が取れなくなるリスクがあります。
- 曖昧な契約書: 工事内容、費用、工期、保証などが明確に記載されていない契約書にはサインしないようにしましょう。
信頼できる業者を見分けるポイント
- 複数の業者から相見積もりを取る: 少なくとも3社程度の業者から見積もりを取り、内容や費用、担当者の対応を比較検討することが重要です。これにより、適正価格や工事内容の妥当性が見えてきます。
- 担当者の対応: 質問に対して誠実に答えてくれるか、説明が丁寧で分かりやすいか、こちらの要望をしっかり聞いてくれるかなど、担当者の人柄や対応も重要な判断材料です。
- 会社の情報確認: 会社の所在地、連絡先、設立年数、建設業許可番号などを確認し、実態が不明瞭な業者には注意しましょう。ウェブサイトやSNSでの情報発信状況も参考にできます。
- 口コミや評判の確認: インターネット上の口コミサイトや、知人・友人からの評判も参考にしましょう。ただし、全てを鵜呑みにせず、あくまで参考情報として活用してください。
屋根葺き替え工事は、一生に一度あるかないかの大きな買い物です。焦らず、じっくりと業者を選び、納得のいく工事を実現しましょう。
屋根葺き替えに関するよくある質問
屋根の葺き替え工事は、ご自宅の安全性や快適性を大きく左右する重要なリフォームです。しかし、工事期間中の生活や、他の設備との兼ね合いなど、多くの疑問や不安を抱える方も少なくありません。ここでは、屋根葺き替え工事に関してよく寄せられる質問にお答えし、皆様の疑問解消の一助となることを目指します。
葺き替え工事中に雨が降ったらどうなりますか?
屋根の葺き替え工事は屋外で行われるため、天候の影響を避けることはできません。特に工事中に雨が降った場合の対応は、お客様にとって大きな心配事の一つでしょう。
雨天時の工事対応
工事中に雨が降り出した場合、多くのケースで工事は一時中断となります。これは、作業員の安全確保はもちろんのこと、屋根の内部構造や新しく設置する屋根材が雨水に濡れるのを防ぐためです。雨水が内部に侵入すると、木材の腐食やカビの発生、さらには雨漏りの原因となる可能性があります。
信頼できる業者は、雨天に備えて以下のような対策を講じます。
- ブルーシートなどでの養生:工事中断時には、既存の屋根材が撤去された部分や、未完成の箇所に防水性の高いブルーシートなどを被せ、雨水の侵入を防ぎます。
- ルーフィング(防水シート)の先行施工:可能であれば、既存屋根材の撤去後すぐにルーフィングを施工し、一時的な防水層を確保します。これは、急な雨にも対応できる非常に効果的な方法です。
- 天気予報の確認とスケジュール調整:事前に天気予報を綿密に確認し、雨が予想される日には屋根を開放する作業を避けるなど、柔軟なスケジュール調整を行います。
工期への影響と業者との連携
雨天による工事中断は、工期の延長につながる可能性があります。特に長雨が続く時期は、当初の予定よりも大幅に工事期間が延びることも考えられます。このため、工事契約時には雨天時の対応や工期延長の可能性について、事前に業者と十分に話し合い、理解しておくことが重要です。
万が一、雨漏りが発生した場合の対応についても、事前に確認しておきましょう。優良な業者は、工事中の雨漏りに対しても責任を持ち、迅速な対応をしてくれます。
工事中の騒音や振動はどのくらいですか?
屋根の葺き替え工事では、既存屋根材の撤去や新しい屋根材の設置に伴い、ある程度の騒音や振動が発生します。近隣住民の方への配慮はもちろん、ご自身の生活への影響も気になるところでしょう。
騒音・振動の主な発生源
主な騒音・振動の発生源は以下の通りです。
- 既存屋根材の撤去:瓦やスレートなどを剥がす際に、叩き割る音や剥がす音が大きく響きます。特に瓦屋根の場合、瓦を降ろす際の音は大きくなりがちです。
- 釘打ち機や電動工具の使用:新しい野地板や屋根材、ルーフィングを固定する際に、釘打ち機や電動のこぎりなどの工具を使用します。これらの機械音は高音で響くことがあります。
- 屋根材の搬入・荷揚げ:新しい屋根材をトラックから降ろし、屋根上へ運ぶ際に、資材同士がぶつかる音や、作業員の足音、声などが聞こえることがあります。
騒音・振動のレベルと対策
騒音のレベルは、工事の内容や使用する工具、建物の構造によって異なりますが、一般的には日中の一般的な生活音よりも大きいと感じる方が多いでしょう。特に既存屋根材の撤去作業は、最も大きな音が発生しやすい工程です。
騒音・振動に対する対策として、業者は以下のような配慮を行います。
- 作業時間の厳守:早朝や夜間の作業は避け、日中の決められた時間帯(一般的には午前9時頃から午後5時頃まで)に限定して作業を行います。
- 近隣への事前告知:工事開始前に、騒音や振動が発生すること、工事期間などを記した案内を近隣住民の方々に配布し、理解を求めます。
- 防音対策:状況に応じて、防音シートを設置したり、騒音の少ない工法を検討したりすることもあります。
工事中は、窓を閉める、一時的に外出するなど、ご自身で対策を取ることも有効です。また、騒音や振動に関して不安な点があれば、遠慮なく業者に相談し、具体的な対策や作業スケジュールを確認しましょう。
葺き替えと同時に太陽光パネルを設置できますか?
屋根の葺き替え工事は、太陽光パネルの設置を検討している方にとって、非常に良いタイミングとなります。同時に工事を行うことで、様々なメリットを享受できます。
同時設置のメリット
葺き替えと太陽光パネル設置を同時に行う最大のメリットは、以下の通りです。
- 足場費用の削減:屋根工事には足場の設置が必須ですが、太陽光パネル設置のためにも足場が必要です。同時に行うことで、足場設置・撤去の費用を一度で済ませることができ、トータルコストを抑えられます。
- 工期の短縮:それぞれの工事を別々に行うよりも、同時に進めることで全体の工期を短縮できる可能性があります。
- 屋根の耐久性向上:新しい屋根材の上に太陽光パネルを設置するため、パネル設置後に屋根材の劣化によるメンテナンスが必要になるリスクを低減できます。
- 発電効率の最適化:葺き替え時に屋根の向きや勾配を調整できる場合、太陽光パネルの発電効率を最大化するための設計が可能です。
同時設置の注意点
メリットが多い一方で、いくつかの注意点も存在します。
- 屋根材の選定:太陽光パネルの設置に適した屋根材を選ぶ必要があります。特に、パネルの固定方法や屋根材の強度、耐久性を考慮することが重要です。一般的に、金属屋根やスレート屋根はパネル設置に適していますが、瓦屋根は工法によって向き不向きがあります。
- 屋根の耐荷重:太陽光パネルは決して軽いものではありません。パネルの重量と積雪荷重を考慮し、屋根がその重さに耐えられる構造であるか、事前に専門家による確認が必要です。場合によっては、屋根下地の補強が必要になることもあります。
- 業者間の連携:屋根工事と太陽光パネル設置は、それぞれ専門分野が異なるため、複数の業者が関わることがあります。スムーズな工事進行のためには、業者間の密な連携が不可欠です。できれば、屋根工事と太陽光パネル設置の両方に実績のある業者を選ぶか、両方の工事を一括で請け負える業者に依頼すると安心です。
- 保証体制:屋根工事と太陽光パネル設置、それぞれに保証が付くことが一般的ですが、万が一の不具合が発生した場合に、どちらの工事に起因するものか不明確になるケースも考えられます。事前に保証範囲や責任の所在について確認しておきましょう。
葺き替えと同時に太陽光パネルの設置を検討する際は、専門家とよく相談し、ご自宅の屋根の状態やご自身のライフスタイルに合った最適なプランを選ぶことが重要です。
まとめ
屋根の葺き替え工事は、既存屋根材の耐用年数超過や深刻な劣化、雨漏りといった問題に対し、建物の安全性と資産価値を長期的に守るための根本的な解決策です。費用は屋根材の種類や建物の規模によって大きく変動しますが、複数の業者から相見積もりを取得し、火災保険や国・自治体の補助金・助成金を活用することで費用負担を軽減できる可能性があります。最も重要なのは、丁寧な説明と明確な見積もりを提示し、充実した保証やアフターフォローを提供する信頼できる専門業者を選ぶことです。この記事で解説した情報を参考に、ご自宅に最適な屋根葺き替え計画を進め、安心できる住まいを維持しましょう。