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屋根カバー工法の迷いと疑問を解消するメリットとデメリットを全解説
屋根のカバー工法はスレート(コロニアル)屋根の上に、軽い金属屋根を重ね張り(被せる)屋根リフォームの工法です。
コロニアルやカラーベストなどのスレート屋根の耐用年数(寿命)が25年〜30年で、10年に1度を目安に屋根塗装によるメンテナンスが必要です。
耐用年数が経過したスレート屋根は屋根塗装を行っても、屋根材自体が脆くなっているために、塗装の下地として機能しなくなります。
このような屋根に塗装をしても塗料本来の耐用年数(耐久性)が得られずに費用対効果を発揮できないばかりか、施工不良の可能性もあるので、耐用年数が経過したスレート瓦は張り替える(葺き替える)必要があります。
しかし、屋根の葺き替え工事は既存のスレート瓦を撤去して、新しい屋根材を設置するためにリフォーム費用が高額になります。
このような背景があり、既存のスレート瓦の上に軽量の屋根材(ガルバリウム鋼板)を被せるカバー工法が開発され、スレート屋根の葺き替え工法として定着しました。
この記事では、屋根のリフォームを検討している方を対象に、屋根のカバー工法で失敗しないために知るべき基礎知識について解説します。
実際に屋根のカバー工法を始める前に押さえておくべき最低限の事前知識についてまとめたので、ぜひ参考にして頂ければと思います。
1.屋根のカバー工法とは
屋根のカバー工法とは、既存の屋根材の上に新しい屋根材を「重ね張り」するスレート(コロニアル)屋根に特化した屋根のリフォーム工法です。
屋根の張り替えは「葺き替え」と呼ばれる、既存の屋根材を撤去して新しい屋根材を設置する工法が主流でしたが、リフォーム費用が高額になるのが欠点でした。
そこで、カバー工法が開発されました。
カバー工法は従来の屋根の葺き替えとは異なり、既存のスレート瓦を撤去せずに屋根を新しくできるために費用が安いのが特徴です。
また、ガルバリウム鋼板と呼ばれる耐久性に優れた金属屋根に葺き替えることで、高い費用たい効果を発揮できるようになりました。
このように屋根のカバー工法は既存の屋根材を撤去せずに新しい屋根材に葺き替えられる、費用対効果の高い屋根のリフォーム工法としてスレート瓦のスタンダードな屋根のリフォーム工法として定着しました。
1-1.屋根のカバー工法が施工できる条件
屋根のカバー工法はスレート(コロニアル)屋根の葺き替え工法として開発された屋根のリフォーム方法ですが、「トタン」や「アスファルトシングル」などの屋根でも施工が可能です。
このように屋根のカバー工法は屋根材の種類によって施工できる屋根とできない屋根があるために、事前知識として屋根のカバー工法が施工できる条件について理解を深めましょう。
1-1-1.カバー工法が施工できる屋根材の種類
カバー工法が施工できる屋根 |
屋根材の種類 |
耐用年数 |
カバー工法の目安 |
スレート屋根(コロニアル・カラーベスト) |
25年〜30年 |
25年〜35年 |
トタン屋根(瓦棒) |
20年〜25年 |
20年〜30年 |
アスファルトシングル |
25年〜30年 |
25年〜35年 |
カバー工法が施工できない屋根 |
屋根材の種類 |
耐用年数 |
リフォーム方法 |
日本瓦 |
80年〜100年 |
・葺き直し(ルーフィングの交換)
・葺き替え |
セメント瓦 |
30年〜40年 |
・葺き替え |
屋根のカバー工法はスレート屋根の新しく屋根の張り替え工法として開発されたために、スレート瓦のような平坦(平ら)な屋根材でしか施工できません。
そのため、日本瓦やセメント瓦などの表面が凸凹した屋根では施工できないので注意しましょう。
1-1-2.カバー工法が施工できない劣化症状
既存の屋根が激しく劣化している場合は、カバー工法が施工できません。
スレート瓦(コロニアル)の劣化症状の一つに、「含水」がありますが、スポンジのように水分を吸収したスレート瓦はカバー工法の土台として、釘を打ち込めないため施工できません。
また、屋根材の土台となる野地板(コンパネ)が腐食して脆くなっている場合もカバー工法は施工できないので注意が必要です。
このようにスレート屋根の劣化が進んだ際は、カバー工法は施工できないので、屋根修理の専門業者にしっかりと現地調査をしてもらうようにしましょう。
1-2.屋根のカバー工法の屋根材
屋根のカバー工法で使用される屋根材はガルバリウム鋼板と呼ばれる金属製の屋根材が使用されます。
このガルバリウム鋼板は屋根材の中でも耐久性に優れているのでが特徴で耐用年数も40年〜50年と長期的です。
また、ガルバリウム鋼板はアルミと亜鉛の特殊なメッキがされているために、塗装などのメンテナンスの必要が無いメンテナンスフリーの屋根材です。
このように屋根のカバー工法はガルバリウム鋼板を使用することで、費用対効果の高い屋根リフォームを実現できるだけではなく、将来的なメンテナンス費用も節約できます。
屋根のカバー工法で使用されるガルバリウム鋼板の商品は下記の通りです。
商品名 |
メーカー |
保証 |
断熱材 |
横暖ルーフα |
ニチハ |
メーカー穴あき保証25年 |
断熱材一体型/断熱材の厚み17mm・硬質ウレタンフォーム |
スーパーガルテクト |
アイジー工業 |
メーカー穴あき保証25年 |
断熱材一体型/断熱材の厚み16mm/ポリイソシアヌレートフォーム |
スマートメタル |
ケイミュー |
メーカー穴あき保証25年 |
断熱材なし |
2.屋根のカバー工法のメリットとデメリット
屋根のカバー工法は近年になって普及するようになった比較的に新しいリフォーム工法です。
まだまだ、一般的に認知されていないために、メリットやデメリットなどのカバー工法の特徴を十分に理解して施工を行う施主様はまだ少数派です。
屋根のカバー工法で「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにメリットとデメリットについて解説します。
2-1.屋根のカバー工法のメリット
【メリット1】工事費用を節約できる
施工方法 |
屋根材 |
費用相場 |
カバー工法 |
スレート→ガルバリウム鋼板 |
¥739,200~¥1,009,800 |
葺き替え |
スレート→ガルバリウム鋼板 |
¥971,200~¥1,671,800 |
※費用相場は建坪30坪の寄棟屋根の住宅を基準に算出 |
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屋根のカバー工法は既存の屋根材の上にガルバリウム鋼板(新しい屋根材)を重ね張りするために、既存の屋根材の撤去費用と廃棄費用が発生しません。
そのため、既存の屋根材を撤去する屋根の葺き替えと比べて費用が安いのがメリットです。
【メリット2】屋根の断熱性と遮音性が向上する
カバー工法により屋根が二重構造になることで、住宅の断熱性と遮音性が向上します。
カバー工法ではガルバリウム鋼板が使用されますが、ガルバリウム鋼板は板状の金属屋根材のために、断熱性と遮音性能の低さが欠点でした。
しかし、カバー工法の場合は既存の屋根材の上にガルバリウム鋼板を設置するために、ガルバリウム鋼板の欠点を補うだけではなく、断熱性と遮音性が向上します。
【メリット3】工期が短くなる
施工方法 |
施工期間 |
カバー工法 |
5日〜8日 |
葺き替え |
7日〜10日 |
カバー工法は「屋根材の撤去」や「野地板の設置」の工程が発生しないために、葺き替え工事と比べて2日ほど工期が短いのが特徴です。
足場を早く解体できることと、廃材処理のトラックの出入りも無いために葺き替えよりもストレスを感じずに施工期間を過ごせます。
2-2.屋根のカバー工法のデメリット
【デメリット1】屋根が少し重くなる
既存のスレート屋根と比べて屋根が少し重くなります。屋根が重くなるほど、住宅の重心が上がるために住宅の耐震性能が低下します。
しかし、屋根が少し重くなると言っても住宅の耐震性に悪影響を与えるものでもありません。
スレート瓦からガルバリウム鋼板にカバー工法を行った場合の屋根の重量は、23〜26kg/㎡に対して、日本瓦の屋根は60kg/㎡で、カバー工法の屋根の方がはるかに軽量です。
住宅の耐震性能に悪影響を与える可能性はありませんが、新規屋根材のガルバリウム鋼板の重さ分、屋根が重くなることを理解しておきましょう。
【デメリット2】雨漏りの特定が困難になる
屋根が二重構造になることによって雨漏りの特定が困難になります。
そのため、カバー工法を行った屋根で万が一雨漏りが発生してしまった場合は、カバー工法の屋根と、下地となっている既存の屋根の両方を撤去して屋根の葺き替え工事による雨漏り修理が行われます。
その際の修理費用は200万円〜300万円ほどになるので、カバー工法を検討する際は既存の屋根材の状態も考慮して慎重に検討するようにしましょう。
3.屋根のカバー工法の施工方法
屋根のカバー工法には、既存の屋根材の上にルーフィング(防水シート)を設置する「直接工法」と、屋根材の土台となる野地板を設置してからルーフィングを設置する「野地板工法」の2つの種類があります。
通常は「直接工法」によるカバー工法が一般的ですが、スレート瓦の劣化が進んでいる場合や、野地板の劣化が進行している場合、「野地板工法に」よる施工が行われます。
「直接工法」と「野地板工法」を使い分けは、劣化状況の確認や強度検査を行い決定されます。
それぞれの工法の選択は屋根の劣化状況によりますが大体の目安は下記の通りです。
築年数 |
カバー工法の種類 |
築20年〜築30年 |
直接工法 |
築30年〜築40年 |
野地板工法 |
築40年以上 |
野地板工法・葺き替え |
4.屋根カバー工法の工程
屋根のカバー工法の工程を知ることで見積もり内容の妥当性を確認できるだけではなく、施工スケジュールの確認の際にも役に立つのでここからは屋根のカバー工法について理解を深めましょう。
【工程1】足場の設置
作業をする職人の安全を確保するために家の周りを一周するように足場を設置します。また、屋根が急勾配で作業に危険が生じる場合は「屋根足場」と呼ばれる作業用の足場を設置します。
【工程2】棟板金の撤去
屋根のてっぺんにある棟板金(金属カバー)を撤去します。棟板金を撤去すると貫板(ぬきいた)と呼ばれる木材も撤去します。
【工程3】ルーフィング(防水シート)の設置
棟板金を撤去したら、ルーフィングと呼ばれる防水シートを設置します。
最終的にルーフィングが屋根の内部に雨水が侵入するのを防ぐ、二次防水として役割があるために、見積もりの段階でルーフィングの種類と耐久性を把握しておきましょう。
また、「3.屋根のカバー工法の施工方法」でお伝えした、「野地板工法」の場合は野地板を設置してからルーフィングを設置するので注意しましょう。
【工程4】ガルバリウム鋼板の設置
ルーフィングを設置したら、ガルバリウム鋼板(屋根材)を設置します。屋根の谷部分の谷樋や軒先部分の役物(破風板金)などを設置してからガルバリウム鋼板を設置します。
ガルバリウム鋼板を設置して棟板金を取り付けたら施工完了です。
【工程5】最終確認・足場の解体
最終確認を行い、問題が無かったら足場を撤去して屋根のカバー工法は完了です。
5.屋根カバー工法を否定する業者は注意
屋根修理を行う業者には屋根のカバー工法に消極的な業者も存在します。
特に、「瓦屋根の工事業者」や「火災保険の申請代行業者」がカバー工法に対して否定的であり、提案に消極的な傾向にあります。これはそれぞれの業者の専門分野によるものです。
「瓦屋根の工事業者」はガルバリウム鋼板によるカバー工法ができません。そのため、ガルバリウム鋼板を使用しないスレート瓦への葺き替えを提案します。
また、「火災保険の申請代行会社」は屋根の不具合を火災保険による修理を斡旋する業者ですが、基本的にカバー工法は火災保険の承認が下りないために、屋根の葺き替えを提案するのが一般的です。
このようにカバー工法は優れた屋根リフォーム工法にも関わらず業者の得意分野や専門分野などの業者の一方的な都合によって否定されたり、提案すらされないこともあるので、業者選びには慎重に行うようにしましょう。
まとめ
いかがでしたか?屋根のカバー工法についてご理解いただけたかと思います。
屋根のカバー工法は、費用対効果の高い工法ですがメリットとデメリットをしっかりと理解して信頼できる業者に工事を依頼することが重要です。